…いかがでしょうか。巧みなフェイントのかけ合い、別々に動く上半身と下半身。瞬時に入れ替わる攻と守、フィールドを駆け巡る静と動。彼らは何をしているのか？
実はこれが、「スポーツ鬼ごっこ」なんです。

こうしたルールの下ではしばしば番狂わせが起きます。スポーツ万能な子が相手にブロックされ続けて全く活躍できない一方で、 「運動が苦手な子でも、ぼんやりとフィールドを見つめている間に相手チームの守りの隙を見つけて、あっさりと宝を取ってしまう」。そんなことが普通に起こってしまうんです。
「普段はフィールドの隅で手持ちぶさたにしてる子が、スポーツ鬼ごっこではみんなから褒められて照れくさい顔をしているのを見ると、何とも言えない気持ちがこみ上げてくる」と富島さん。親チームと子チームで対戦した時には、身長の小さい子がお父さんの視界に入らず、気づかないまま守りを突破されてしまったという笑い話も。誰にでも活躍のチャンスがある点が、スポーツ鬼ごっこ最大の特徴です。

日本全国に広がりを見せ、今度は世界大会まで開催予定のスポーツ鬼ごっこ。しかし富島さんは、スポーツ鬼ごっこを単に肉体の限界を競う「スポーツ」を超えたものだと捉えています。チームワークが不可欠なスポーツ鬼ごっこは、子ども達にとっては相手の立場で考え、思いやる気持ちを理解する機会になり、地域にとっては、スポーツ鬼ごっこをきっかけにご近所の交流が生まれるきっかけにもなるのです。

「単なるスポーツ鬼ごっこの普及ではなく、その先の子ども達の成長や地域の活性化を目的としています。そういう信念があったからこそ、たくさんの人が参加してくれたのでは」と富島さん。競うより楽しむ、楽しむより貢献する。これまでにないスポーツのあり方が、スポーツ鬼ごっこに垣間見えた気がしました。