船橋の暮らしに役立つお店特集
(更新)
まいぷれ × 矢島酒店特集 第1回
全国の蔵元200社以上、常時およそ500種類。船橋で60年以上続く地酒専門店——と聞くと、詳しい人向けのお店に見えるかもしれません。でも、このお店には酒屋特有の「入りづらさ」を8年かけて一つずつ改善してきたスタッフの努力がありました。全3回にわたってお届けする「まいぷれ × 矢島酒店特集」。第1回目は、矢島酒店が入りやすい酒屋である理由と店頭に立つスタッフにフォーカスします。
酒屋の前で、一度足を止めた経験はないでしょうか。
など、初めての人からすると、酒屋はどこか入りづらい雰囲気に感じることもあるかもしれません。馬込沢駅から徒歩4分の矢島酒店は、全国的にも知られる地酒専門店です。ただ「気になってはいたけれど、入ったことはない」という方も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回、まいぷれ編集部が実際にお店を訪ね、お話を聞いてきました。お店の中はどうなっているのか、どんな人が働いているのか——。話を聞いたのは、実際にお店で働く2名のスタッフ。取材を終えて分かったのは、この問題を誰よりも感じていたのが、実はお店側だったということです。
CHAPTER 01
創業から60年以上。もとは地域の日常の需要に応える町の酒屋でしたが、現在は日本酒を中心とした地酒専門店として全国的に知られています。
取引のある蔵元は200社以上。店頭にはおよそ500種類が並びます。数だけでも圧倒されますが、その多くは3代目店主が実際に蔵を訪ね、試飲したうえで仕入れたもの。
また、日本酒だけではなく、焼酎、ワイン、ノンアルコール飲料も取り扱っています。店舗横には専用駐車場があり、オンラインショップも運営しています。
CHAPTER 02

浅川さんあさかわさん
パッケージデザイナーを経て、2018年に矢島酒店へ入社。「初めての方にも利用しやすい酒屋」を目標に、売り場づくりや商品案内、店内の雰囲気、情報発信などを整えてきました。現在はブランドディレクターを務めながら、店頭での接客も担当しています。
大竹さんおおたけさん
福島県で公務員として働くかたわら、日本酒好きが高じて「サケディプロマ」を取得。転職を機に関東へ移り、2024年に矢島酒店へ入社。現在は店頭での接客と飲食店への営業を担当しています。趣味はマラソン。社内ではラーメン好きとして知られているとか。
CHAPTER 03
不安その①「お酒に詳しい人が行く場所に見える」
その見え方を最初に問題視したのは、外から来た一人のスタッフでした。
浅川さんが矢島酒店に入ったのは2018年。前職はデザイナーで、好きだったのはコーヒーと日本酒。その二つのどちらかとデザインを掛け合わせられる仕事を探していたところ、矢島酒店と出会ったといいます。
面接で初めてお店に入ったとき、まず感じたのは品揃えの良さでした。

スーパーや百貨店では買えない珍しい銘柄がある。 いいものが揃っている店だ、 とはっきり感じました。 同時に船橋にこんなすごいお店があるのを知らなかった…とも。
ただ、同時に別のことも感じていたそうです。
2018年|浅川さんが振り返る、入社当時の店内
「今ほど整っている感じではなくて、いい意味で"町の酒屋"でした。店内の雰囲気も玄人向けというか」
当時は店内で発送作業をしていたため、店の中は常に段ボールが積み重なっていた。棚にはいい銘柄が並んでいるけれど、その良さは知っている人にしか届いていない。浅川さんは当時をそう振り返ります。
「宝探しをするのは楽しいお店なんです。でも、初めての方が来店したときに、どこから見たらいいのか、何が置いてあるのかわからない」
まず先に手をつけたのはオンラインショップとSNSだった、と浅川さんは言います。
理由は単純で、多くのお客さまが来店前にインターネットで店を調べているから。検索して最初に行き当たるのはホームページやSNS。つまり第一印象は、お店に入る前にもう決まっているということです。
当時、商品写真は床に置いて撮ったものがそのまま使われていたそうです。入荷したらとにかく撮ってアップする、というスピード優先の運用。そのぶんトーンはバラバラで、全体的に暗い印象になっていたといいます。
まいぷれ編集部より
扱う銘柄はおよそ2000種類。入荷のたびに撮影して掲載していくことを考えれば、スピードを優先した運用にも理由があったのだろうと思います。
浅川さんは撮影の仕方から見直し、明るく整った状態に揃えていきました。同時に、撮影の角度と構図をルールとして決め、店頭とオンラインの雰囲気を統一していったといいます。
不安その②「種類が多すぎて、どこから見ればいいか分からない」
問題を解決するために什器まで入れ替えた。
売り場で大きく変わったのは、お店の中央にある冷蔵ケースだそうです。
もともとそこには背の高い焼酎の棚がありました。 日本酒の冷蔵庫が並ぶ中に焼酎棚があることで、 売り場の動線も分かりづらくなっていました。 さらに入口から見ると視界を遮り、 店の奥まで見通せないため、 店内を暗く感じさせる原因にもなっていたといいます。
浅川さんは社長と相談し、 背の低い冷蔵ケースに入れ替えました。 奥まで見通しがきくようになり、 店内も明るい印象に。 そこには、 今おすすめしたい銘柄や季節のお酒を並べるようにしたそうです。 いつ足を運んでも新しい発見や季節を感じられるコーナーになっています。
すべてを刷新したのかというと、そうではありません。
お店にはもともと、手書きのPOPが並んでいました。トーンはばらばらでも、手書きには手書きにしかない良さがある。浅川さんはそう考えたそうです。

居酒屋さんで手書きのメニューを見ると、 少しテンションが上がるじゃないですか。 手がかけられている感じがするし、 美味しそうに見える。 それに、 その時の旬が伝わる。 あの感覚は残したくて。
すべてを塗り替えるのではなく、これまでの良さも残していく。だから今でも店内には、昔からある酒屋らしさが残っています。
店内で探せる、ちょっとした楽しみ
現在POPを書いているのは主に浅川さんですが、若手スタッフが書くこともあります。書き手によって少しずつ個性が違うので、「これは浅川さんが書いたでしょう」と当てられるお客さまもいるのだとか。
不安その③「店員さんに何と声をかければいいか分からない」
何も分からない状態でも大歓迎!
接客の方針については、明確な前提が一つあるそうです。

基本的に、 店頭でお酒を見ているお客さまに、 こちらから積極的にお声がけすることはありません。 私自身、 初めて行くお店はすごく緊張するタイプですし正直、 話しかけられたくないと思うこともあり…。まずは自分のペースで店内を見て、酒屋で過ごす時間そのものを楽しんでもらいたいと思っています。
商業施設の中にあるお店とは違い、ここに来る人はある程度目的を持って来ている。できるだけその時間を邪魔したくない、という思いもあるのだとか。
ただしコミュニケーションをとらないというわけではありません。店内の様子は常に見ていて、迷っている人はどこかで視線を送ってくる。そのタイミングで声をかけるそうです。求められたときにすぐ対応できる距離を保っておく、という設計です。
では、こちらから聞きたいときは何と話しかければいいのか。普段よく聞かれる質問を教えてもらいました。
初めての方から、実際によく出る質問
・辛口はどれですか
・◯◯という銘柄に似たような味わいのものはありますか
・お酒好きの方にプレゼントを贈りたいけど、自分はお酒を飲まないのでわからない
3つめについて、浅川さんの返答は明快でした。

『わからない』は、 大歓迎です。 むしろやりがいがあります。 まずはご予算をお伺いして、 そのあとはお話を聞きながら、 一緒に選んでいきます。 何も決まっていなくても大丈夫です。
この8年で特に力を入れて見直してきたのが、接客だといいます。

私たちにとって100回目の質問でも、 お客さまにとっては1回目。 だからどんなときでも誠実にお応えする。 それをスタッフ全員で常に意識しています。
接客については浅川さん自身が入社した頃に感じた経験が、改善の出発点になっているそうです。
ちなみに矢島酒店では、サケディプロマなどの資格を持つスタッフが社員の半分以上を占めています(2026年8月時点)。しかも、これらはそれぞれが自主的に取得したものだといいます。浅川さんが資格を取得した理由も、お客さまのためでした。

資格のあるなしは、業界の人にとってはそこまで大事ではないんです。でも、お客さまから見たときに「この人だったら安心してお願いできる」と思ってもらえるなら。
この8年でお店の様子はずいぶん変わりました。特にここ1〜2年は客層がさらに若くなり、お店の雰囲気も目まぐるしく変わっているといいます。それでも、まだ足りていないと感じている部分があるそうです。

お客さまに良いお酒を届けるところまではできている。でも、日常でどう楽しむのかは、まだ私たちが表現できていない部分です。お酒のある暮らしが豊かであることをもっと多くの人に伝えたいんです。
浅川さんは、お酒を中心とした取り巻く空間全体を提案していきたいと考えているそうです。それはこの8年間、ずっと変わっていないテーマだといいます。
CHAPTER 04
不安その④「そもそも、中にどんな人がいるのか見えづらい」
たとえば、こんな人が店頭に立っています。
矢島酒店で店頭に立っているのは、20代から30代の若手が中心です。昔ながらの酒屋のイメージからすると少し意外かもしれません。実際、「若いスタッフが多いんですね」と言われることも多いのだそうです。
今回もう1人、お話をうかがったのが大竹さんです。入社して約2年。福島県で公務員として働いていたところからの転職でした。
公務員時代から自主的に資格を取るほどの日本酒好きで、 周囲にもそう認知されていたため、 酒屋への転職はさほど驚かれなかったといいます。
好きな日本酒に関わった仕事をしてみたい。 それがこの業界に入った一番の決め手です。
働き始めて感じているお店の魅力として挙げてくれたのは、 活気あふれる酒屋だということでした。
「明るい」という印象が強かったです。 若いお客さまも多く、 沢山のお酒がズラッと並ぶ。 お店にいる人がみんなワクワクしているような、 そんな空気があります。 嬉しいですし、 やりがいにもなりますね。
大竹さんは自身のnoteたけPの飲まなきゃいRUNねぇっ!で日々発信を行っています。日本酒とマラソンと外食を組み合わせた、酒屋のコンテンツとしてはかなり変わった内容です。
このnoteを始めた理由は、裾野を広げたかったからだといいます。
お酒の発信って、 どうしても味わいや銘柄にフォーカスしたものが多い印象でした。 お酒に興味を持ってもらうために自分に何が出来るかを考えたときに、 自分の好きなものを組み合わせて面白そうなことは出来ないか、 と始めたのがこのnoteです。
ではなぜ、 この組み合わせなのか。 ここに大竹さんの持論があります。
日本酒好きでラーメンも好き。 でも、 ただ飲んで食べているだけだと、 やっぱりカロリーが気になる。 ならば、 その分走って消費しよう、 と。 テーマは「飲んで走って啜って健康!」。 長くお酒を楽しむためには、 自分自身が健康でいなきゃいけない。
この考えを、 noteでこのようにルール化しているそうです。
大竹さんが自分に課しているルール
外食を1回したら、1週間以内に20km走る。
走りきれなかった場合は、2週間の外食禁止。
お酒を飲んでいなくても、「なんだか面白そうなことをやっている人がいる」と興味を持ってもらえたら。 それがnoteを続けている理由だといいます。
ちなみに社内でも、マラソンとラーメンと日本酒という三つの要素がそのままのキャラクターとして通っているそうです。前職が公務員だったとは、なかなか思われないとのことでした。
ここまでの内容で最初に挙げた4つの不安は解消できたのではないでしょうか?矢島酒店は日本酒ファンから高い支持を得ながらも、初心者の人も来店しやすい環境が整えられているお店でした。近隣の方はもちろん、酒屋に初挑戦してみたいという方にも強くお勧めしたいお店です。
最後に、お2人からそれぞれお客さまへのメッセージをいただきました。

浅川さん
「初めて来ました」と声をかけていただけると嬉しいですし、励みにもなっています!店頭に並ぶお酒も毎週少しずつ変わっていきますので、 ぜひコンビニに立ち寄るような気軽な気持ちでお越しいただければと思います。
大竹さん
日々の晩酌のお供からプレゼント用の特別な一本まで幅広くご用意しています。酒屋に少しハードルを感じる方もいるかもしれませんが、とにかく気軽に来ていただきたいです。分からないことや気になることがあれば何でも気兼ねなく聞いてください!
NEXT ─ まいぷれ × 矢島酒店特集 第2回
ビールとたばこを売っていた町の酒屋は、
なぜ地酒の道へ進んだのか。
60年の歴史を、社長と店長に聞きます。
coming soon…
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